初!大阪万博めし
初!大阪万博めし 万博の最寄り駅に降り立った。 時刻は夕暮れ時、おかげで入場は驚くほどスムーズだった。 そういえば、とニュースアプリを開くと、オーストラリアパビリオン前でステーキの試食があるという情報が目に飛び込んできた。これは行くしかない。 (ダッシュ!) パビリオンへ足を運ぶと、試食開始まであと30分ほど待つ必要があるようだ。 うまい肉のためなら、このくらいの時間はどうということはない。 プロジェクターに映し出される映像をぼんやりと眺めながら待つこと30分。ついに料理人が姿を現した。 (にこやかな日本人の料理人) 軽快なトークと共に肉が焼かれていく。しかし、ここで一つの疑問が頭をよぎる。 料理人はステーキが1枚しか焼いていないのだ。 あたりを見渡せば、ざっと200人近い人々がこの瞬間を待っている。 その場にいた全員が、きっと同じことを思っていたに違いない。 ステーキ1枚しか焼いてない、と。 (1枚しか焼いてない…) このままでは、たった1枚のステーキを200人で分け合うことになり、パニックは必至だ。 助けを求めるように、近くにいたオーストラリアパビリオンのスタッフらしき人物に視線を送るが、スマートフォンに夢中だった。 (スマホチェックにいそしむスタッフ) まずい、このままでは本当にまずい。そうこうしているうちに、ステージ上の料理人は肉を焼き終え、今度はサラダのようなものを作り始めてしまった。 (1枚だけ焼いて終わり?…) 終わった。そう確信したその時、一人の屈強な欧米系の男性が現れた。 彼こそが救世主だったのだろうか。 男性はやおら机の下から大きなタッパーを取り出した。中には、あらかじめ調理された肉がぎっしりと詰まっているではないか! 安堵のため息が漏れる。よかった、本当に助かった。 (肉だ!) 無事に肉は全員に行き渡った。 あれだけ待ってありつけたのは、ほんの一切れの肉だったけれど。 それでも、口にしたOGビーフは格別の味わいで、いつか本場でたっぷりと味わってみたいと思わせるには十分すぎるほどの美味しさだった。 (大満足!) (注:私が聞いてなかっただけで、会場の方に食事を配る説明はありました)